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magic mirror  ( いつも )

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□ 物語り □

ハイライト

僕は毎朝公園を走る。

午前六時。ランニングシューズを履き、玄関を出る時間だ。
今日から夏休みで、これといって早起きする必要もないわけだけど、
毎日欠かさず走ってきたから、のんびり寝ていられなくなった。

外の空は、もう陽が昇り始めたのか、うっすらとオレンジに雲が染まっていた。
セミの鳴き声も聞こえてくる。
電信柱にとまったセミの横を走る時は、最悪だ。
折角僕が静寂とした住宅地の間をそれこそ人っ子一人通らない道路の真ん中を、英雄気取りで
走っているのだけれど、大きなセミの声で、僕の心はもろくも崩れ去り、
普通の小学六年生に戻ってしまうのだから、心地が悪い。
セミの声がないと、住宅地の中を走り抜ける僕の足音は、
何処までも響いて行きそうなくらいまだ寝ていた。
人っ子一人出逢わなくても、心は躍るように清々しく、心地よさをかんじて、僕は公園を目指した。
公園まではわずか一KM先で、十分もかからない距離だ。

公園は「さいき公園」といった。
小高い丘と小さな池に囲まれた、情緒豊かな公園だ。
僕はまず公園の名前が書かれた看板の下をくぐり抜ける。
先には広場、グラウンドに近い広場になっていて、
僕と同じ小学生たちがバット片手に小さな野球軍をつくり大いに盛り上がっている。
グラウンドを抜けると、池が見える。公園を囲むように出来た池のほとりは、
冷たい空気が流れているみたいで、少しひんやりする。
カモが人の足音を聞くと一斉にグワッグワッと騒ぎ出し、逃げるように池に飛び込み泳いでいく。
時々、カメが顔を出したり、鵜なんかも飛んできたりして、さいき公園は豊かな憩いの場所だった。

池の周りを九十度ぐらい周って走ったところに、丘の上へ続く坂道がある。
僕は、少し息を切らせながら、それでも、一気に駆け上る。
てっぺんには何もないのだけれど、丘から見下ろした町の家々はどれも積んである積み木のように
静かに並べられていた。
空を見上げれば、空に押しつぶされまいかと思うぐらい近くにあって、
雲が描かれてある。
僕は、一度走るのをやめてこの空を見渡した。
「うーーーーん」
と、声に出して伸びをする。
とても静かな朝だ。
誰も僕の頭の中を邪魔しない。ここにいると、とても伸び伸びとしていられる。
ここに来ることが、僕にとって何よりの安心。
もう一度、「うーーーん」と両手を上げて伸びをした。
今日から夏休みだ。誰もここに来るものはいないだろう。と、気も抜けきっていた。
だから、ハトがバタバタっと何羽か飛び立った音を聞いた時は心底びっくりした。
「いやいや、驚かせてしまったかね」
振り返った僕の顔は強張っていたに違いないのだが、そんなことおかまいなしと言うように、
目の前に居た紳士はニコニコ笑って挨拶をした。

「いいえ、別に。誰もいないと思っていたから」
僕の動揺は隠しきれない。声が上ずる。
「なあに、妖しいものではありませんよ。ただ、ここで、ハトに餌をやっていましてね」
「はあ。ハトに、餌?」
僕が答えることにまごついていると、紳士の周りにどんどんハトが集まってきた。
クルックー、クルックーと鳴いて紳士について歩く。
「あははは、そんなに怖がることはないんですよ。ハトはかわいいもんです。
なんなら、あなたも餌をやってみますか」
「いいえ、僕はやらない」
「あははは、これは、はっきりと断られましたね。あなたは、ハトはキライですか」
「キライとか、好きとか、そんなこと・・・・、ハトなんだからそんなこと考えないし」
「そうですか。ハトだから好きでもなければキライでもない。じゃあ、ネコはどうですか?
この町にもたくさん住んでますね」
「ネコ?僕は飼ったことがないから、好きかキライかって言われても」
「そうですか。じゃあ・・」
と、紳士が言いかけて、僕は、
「ごめんなさい。もう、家に帰らなくちゃ」
そう言って、紳士の横を走って通り抜け、坂道を焦りながら降りた。
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Date:2010/09/20
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